トレーニング

成長段階に合わせたトレーニング

育成年代のアスリートにとって、適切なトレーニングは非常に重要です。しかし、成長段階に合わせたトレーニングを行うことが最も効果的で、安全な方法です。ここでは、その理由と具体的なポイントについて説明します。

著名なアスリートのトレーニングをそのまま真似しない

近年ではスマートフォンで簡単に著名なアスリートのトレーニング動画や記事を見ることができ、そのトレーニング方法を真似したら強くなると思うかもしれません。

しかし、プロのアスリートが行うトレーニングは、体力や技術に基づいた非常に高度で専門的なものであり、個々の身体特性や目的に合わせたトレーニングです。

また年齢によってもトレーニング方法や負荷は異なるため、育成年代のアスリートが大人のトレーニングをそのまま真似すると、怪我のリスクが高まり、逆に成長を妨げる可能性があります。

自分が今どの成長フェーズにいるか知ること

育成年代のアスリートは、身体の成熟度に応じてトレーニングを調整する必要があります。
身長の発育が最も盛んな(1年あたり7〜9cmの増加)年齢をPHV(Peak Height Velocity)年齢と言います(図1)。

日本人男子では、平均的には12〜13歳頃に出現しますが、早ければ10歳、遅ければ16歳と大きな個人差があります。女子は男子より約2年早く出現します。

成熟度を知る方法として、下記のサイトから身長、体重、座高、西暦の4つを入力することで簡易的にPHV年齢を計算することができます。

Prediction of Age of Peak Height Velocity
https://wwwapps.usask.ca/kin-growthutility/phv_ui.php

図1:身長成長速度曲線の成長区分 (村田, 1996)

図1:身長成長速度曲線の成長区分 (村田, 1996)

これにより今の成熟度を知ることができ、それぞれのフェーズに応じたトレーニングが可能になります。

成長フェーズに応じたトレーニング

【Phase1】身長が急激に伸びる前の段階

バランス、協調性、柔軟性の向上に重点を置いた多様な運動を行います。様々な動作を行い、動きづくりをしていきましょう。(手押し相撲や受け身など)

【Phase2】身長が急激に伸び、ピークを迎える段階

身長が最も伸びているこのフェーズでは柔軟性を保ちながら、軽い抵抗運動や基礎的な持久力トレーニングを行います。ストレッチ(関節可動域の確保)や自体重でのスクワット(体幹+下半身)や腕立て伏せ(体幹+上半身)などが適しています。

【Phase3】ピークを過ぎているが、まだ身長が伸びている段階

軽負荷での基礎筋力トレーニングを始めて良い段階です。適切なフォームで、最初は少ない回数、セット数で始めていきましょう。トレーニング後はしっかりとストレッチも行いましょう。

【Phase4】身長の伸びが止まる段階

傷害予防、パフォーマンス向上のため高強度のウエイトトレーニングや持久力トレーニングを開始していきましょう。スポーツの特異的なスキルも身につけていきましょう。

PHV年齢に基づいたトレーニングは、育成年代のアスリートの長期的な成長とパフォーマンス向上に欠かせません。成長のピーク時期を理解し、適切なトレーニングを行うことで、健康的な成長を促進し、怪我を予防することができます。親や指導者と協力しながら、成長段階に合ったトレーニングプランを作成しましょう。

■ 編集者・監修情報
編集者:西川 潤
監修:酒井 リズ 智子