今回は、「疲労と睡眠の関係性」の仕組みを解説しながら、成長期の子供たちがより良い睡眠を取るために必要な栄養バランスのとり方や睡眠環境を改善する5つのポイントについてご紹介します。
疲労による活性酸素増加と酸化ストレス
まず「疲労と睡眠の関係性」について解説します。
疲労が蓄積すると、体内で活性酸素が増加し、酸化ストレスが生じます。この状態が続くと、細胞がダメージを受け、免疫機能の低下や回復力の減少を招きます。
特にアスリートや成長期の子供たちにとって、適切な睡眠は酸化ストレスを軽減し、身体を回復させる重要な時間です。
睡眠中には抗酸化物質が活性化し、ダメージを修復する働きがあります。良質な睡眠を得ることは、疲労回復だけでなく、酸化ストレスから身体を守るために不可欠です。
より良い入眠をサポートする栄養素
入眠をスムーズにするためには、特定の栄養素が役立ちます。以下の栄養素をバランス良く摂取することで、睡眠の質を向上させることができます。
①トリプトファン
トリプトファンはセロトニンとメラトニン(睡眠ホルモン)の前駆体となるアミノ酸です。これを多く含む食品には、七面鳥、チーズ、ナッツ、大豆製品、卵があります。
②マグネシウム
マグネシウムは筋肉の緊張を緩和し、神経の過剰な興奮を抑える役割を持っています。緑黄色野菜、ナッツ類、バナナ、全粒穀物などに豊富です。
③ビタミンB6
ビタミンB6はトリプトファンの代謝を助け、セロトニンとメラトニンの生成をサポートします。バナナ、じゃがいも、魚(特にサーモンやマグロ)に多く含まれています。
④カルシウム
カルシウムはメラトニンの生成を促し、神経を落ち着かせる効果があります。乳製品、海藻類、小魚に含まれています。
⑤メラトニンを直接含む食品
メラトニン自体を含む食品として、チェリーやキウイが挙げられます。特にキウイは寝る1時間前に食べると入眠効果が高まるという研究報告があります。
1) Doherty R, Madigan S, Nevill A, Warrington G, Ellis JG. The Impact of Kiwifruit Consumption on the Sleep and Recovery of Elite Athletes. Nutrients. 15(10):2274 ,2023
睡眠環境の改善も重要
これらの栄養素の摂取と併せて、以下のような環境改善も良質な睡眠を得るためには不可欠です。
- 部屋を暗く、静かに、適温/適湿を保つ
- 寝る前にリラックスした時間を作り、スマートフォンやテレビの使用によるブルーライトを控える
- 就寝時間と起床時間を規則正しくする
- ゆっくり入浴し、身体が冷える前に寝床に入る
- 就寝2-3時間前までに夕食を済ませる
疲労による酸化ストレスを軽減し、良質な睡眠を促進するには、適切な栄養素の摂取が鍵となります。
日常生活にトリプトファンやマグネシウムを多く含む食品を取り入れ、睡眠環境を整えることで、育成年代の子供たちやアスリートは心身ともに健康を維持できるでしょう。
■ 編集者・監修情報
編集者:西川 潤
監修:酒井 リズ 智子